監獄実験に学ぶ

サービス残業にセクハラ・パワハラ、労働条件の一方的な改悪や不当解雇、これらが労働社会に蔓延しているのは、やはり労働者の立場が雇用者・会社に対して極端に弱いからでしょう。

パワーハラスメントのコンテンツでも言及していますが、場合によっては人間性すら否定するような発言をする雇用者・上司も珍しくないほどです。

なぜこれ程までに立場の強弱が生まれるのか?
この点について非常に興味深い実験をご紹介しましょう。

<スタンフォード監獄実験>

これは1971年、米国のスタンフォード大学で行われた心理学の実験のエピソードです。

実験の目的は、与えられた地位や肩書きによって人間の行動がどのように変化するかを観察するもので、被験者は新聞広告などで集められた一般の人たちでした。

スタンフォード監獄実験

約20人の被験者を「看守」と「囚人」の二つのグループに二等分し、大学の地下室を本物の監獄そっくりに改造した部屋でそれぞれの役割を演じさせたのです。

当然の事ながらこれは心理学の実験ですから、始めのうちは看守役・囚人役ともに「役割を演じている」という意識があったようですが、管主役の人間達は次第にその立場に馴染み始め、自発的に囚人役の人たちに対して色々な罰則を与えるようになったそうです。

看守は囚人役の人たちにバケツに用を足すことを強制したり、さらに実験として禁止されていた暴力すら振るうようになりました。

囚人役の人の中には精神錯乱を起こす人もいたようで、あまりの惨状を見かねた人が警察に通報した事により実験は当初の予定を繰り上げて中止されましたが、その時管主役のグループは「話が違う」と実験の続行を希望したそうです。

立場が人格を変える

人間は誰でも良心を持っていると同時に、他人を思い通りに支配したい、威圧したいという残虐性を持っていると思います。

そういった反社会的な衝動は、普通の状態であれば理性によって押さえられているものですが、閉鎖的な環境のなかで自分の発言力・強制力がだんだん増してくると、

「命令すれば従わせる事ができる」
という心理に囚われるようになってしまうのではないでしょうか。

監獄の実験を会社に当てはめるとしたら、私達労働者は囚人役です。
しかし、実際には罪を犯したわけでも虐げられるべき立場でもありません。あくまで自分でそこにいる事を選択し、経済的な契約を交わしているに過ぎないのです。

看守役の雇用者、管理者もあくまで役の上での存在です。盲目的に従う必要など全くありません。

不当な扱いに押しつぶされそうになった時には、私達があくまで役割の上で囚人を演じているだけであり、まわりを囲んでいる檻には鍵すら付いていないということを思い出してください。

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