日本には労働基準法をはじめ色々な法律があり、その多くは立場が弱くなりがちな労働者を保護するようになっています。
労働者がこれを知らなかったり、あるいは知ってても主張しにくい立場に追い込まれているためにせっかくの法律が形だけになってしまっている場合もありますが、最も深刻なのは労働者自ら権利を放棄しているようなケースです。
以前にある人が、
「私はあまり仕事が早くないから、残業代を受け取る資格が無い。だから残業の時間は申請しない」
と言っているのを聞いたことがあります。
そしてどうやら、この発言をした本人はそれを「美徳」と捕らえているようなのです。
また、ここまで行かないにしても、
「お金のことに関して自分から請求するのが嫌だから」
「権利を主張すると生意気な人間だと思われそうだから」
などと、何となく周りの反応を気にして自分から権利を放棄している人は少なくないでしょう。
もちろんこのような考え方をするのは、根が謙虚で真面目な方だからこそだと思いますが、自分から進んで権利を放棄してしまうと、結果的に他人の権利も侵害する可能性があることを知っておいて欲しいと思います。
ここでたとえ話をしてみましょう。
あなたが東京都で銭湯を経営していたと考えてください。
ちなみに入浴料は450円。これは物価統制令という法律によって自治体毎に決められている料金(記事執筆時)です。
しかし、近所にある別の銭湯が突然「うちは設備が古いから、430円なんて申し訳ない。利益なんかいらないから入浴料は50円にします。」などと言い始めたとしたらどうなるでしょうか?
法律には違反していますが、もしも当局の取締りが甘ければ激安銭湯は営業し続け、あなたの銭湯のお客は激減するでしょう。
このような不当な安値でのモノ・サービスの提供は、経済の世界ではダンピング(不当廉売)と呼ばれていて、独占禁止法に抵触する可能性が高い行為なのです。

労働社会でも「私は残業代なんて要りません!」とか、「私は労災保険金の支給なんて求めません!」とか、「私は有給休暇なんて求めません!」という人が増えたりすれば、それを利用して設けようとする経営者は正当な権利を主張するの労働者を採用しなくなったり、場合によってはクビにする可能性もあるでしょう。
仮にそこまで事が大きくならなかったとしても、他の人が権利を主張しにくい空気を作ってしまうことは容易に想像できます。
本人は良かれと思って行ったことでも、不当に悪い労働条件を受け入れたり自分から権利を放棄する人が増えれば、組織や会社、そして労働社会全体に悪影響を及ぼすということを忘れないで下さい。
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